ことを、一々考え、理窟をつけ、いいか悪いかと区別をして、自分勝手に泣いたり憤ったりしている自分は、馬鹿だと思う人もありましょう。
素直な人、おとなしい人、そういう人々に与えられる世間的な快楽や追従は、また賞め言葉は、皆自分から去ってしまうでしょう。けれども、それでもかまいません。かまわなくはなくても心を引き止められ、患わされてはいられません。自分には自分の踏むべき道、生くべき生き方があるに違いないのです。
そうはお思いなさいませんか。
私がこうやって、自分の手で書き、自分の頭で考えている通りに、「私の一生」がなければならないのは確かです。けれども、まだそれはどうするのが私の一生なのか分りません。今にそれが分るように、いつかハッと感じられるように心を準備して置かなければならないことを、どのくらい痛切に感じていることでしょう。ふざけている或るときの私のみを知る人、または肝癪が起っているときの私を知っている人はあります。
けれども、自分を育てて行きたい願望に燃えるときの私、そのために絶えず苦しみ、歎きする自分を優しく見ているものは、やはりこの自分だけほかないのを、このごろになって知り
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