狂暴な自然に抗しながら、健気《けなげ》に良人を扶けて、家を守り、殆ど生命を賭して子を育てる女性に対して、如何なる男性が侮蔑の声を発せられましょう。
 一朝、野蛮人の襲撃に会えば、彼等は、只、彼等の団結によってのみその敵を防がなければならない。一都市の政治的、商業的問題を本国と取定める場合には、誰か、彼等の信任する一人を、あらゆる舌、あらゆる心の代表として選出しなければならない。共和政体は、合衆国が独立を宣言するより以前から、その胚種を持っていたのではないでしょうか。
 困難に困難を忍びながらも、腕さえあればこれだけの収穫は見出せる! 幾エーカーと云う耕地に、小山の如く積みあげられた小麦の穂を眺めて、彼等は思わず誇りに胸を叩いたでしょう、その心持は察せられます。今日、彼等の社会を風靡していると云われる物質主義、精力主義、並に実利主義は、未開の而も生産力の尽くるところを知らない自然に向って、祖先が、本能的に刺戟された一方面の発育であると云えるのではありませんでしょうか。
 源泉は遠い遠い彼方迄|遡《さかのぼ》る、深い真実な人間生活、圏境の裡から湧き出している、それ故、まるで過去の歴史と、開
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