題となっては、種々な部分と、方法とに岐れます。これ等の、相互の生活が結合しないうちは何にも影響のないことであって、いざ一家を持つと種々な面倒や感情の齟齬《そご》を来しそうな点について、出来る丈精密な熟議を凝します。男子も同様な方面に働く人なら云うことはない。然し、そうでなく、或る程度までの趣味[#「趣味」に傍点]位に相手の仕事を見ていた者は、ここで、最大の決心をして女性の要求を拒絶しなければならないか、その深い広い愛で、悦んでそれを承引し得るかと云う境に立たなければならなくなって来るのです。斯様な立場では婦人も苦しみます。けれども、若し男性が、その時一時の気の毒さや興奮から、それを肯《うけが》って、却って後に不幸を招くようなことをするよりは、静に考え、寧ろ結婚するよりは、友達として平和な交際を続けることを勧めるほかないことさえあります。
斯様に、全く自己の選択と意志によって一旦結婚してからは、彼等夫妻の関係が、真個に強い堅いものになるのは当然でありましょう。愛人とし、友として相互に見出した唯一人の男であり、女である。若し当初に於て誤ったものでないならば、彼等は老年、死に到る迄、胸の底
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