短歌習作
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)瞳《め》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ホロ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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[#ここから1字下げ]
涙ぐみてうるむ瞳を足元に
  なぐれば小石うち笑みてあり
かんしやくを起しゝあとの淋しさに
  澄む大空をツク/″\と見る
ものたらぬ頬を舌にてふくらませ
  瓦ころがる抜け歯の音きく
うすらさむき秋の暮方なげやりに
  氷をかめば悲の湧く
角砂糖のくずるゝ音をそときけば
  若き心はうす笑する
首人形遠き京なるおもちや屋の
  店より我にとつぎ出しかな
はにかみてうす笑する我よめは
  孔雀の羽かげ髷のみを出す
物語り思ひ出つゝ我髪を
  切りて作りぬ細き指環を
生れ出て始めてふるゝ三味の糸
  うす黄の色のなつかしきかな
調子なき思のまゝをかきならす
  ざれたる心我はうれしき
そぼぬれし雄鳥のふと身ぶるひて
  空を見あぐる秋雨の日よ
秋の日をホロ/
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