\と散る病葉の
たゞその名のみなつかしきかな
気まぐれに紅の小布をはぬひつゝ
お染を思ふうす青き日よ
泣きつかれうるむ乙女の瞳《め》の如し
はかなく光る樫の落葉よ
蛇の目傘塗りし足駄の様もよし
たゞ助六と云ふさへよければ
助六の紅の襦袢はなつかしや
水色の衿かゝりてあれば
真夜中の鏡の中に我見れば
暗きかげより呪湧く如
呪はれて呪ひて見たき我思ひ
物語りめく折もあるかと
紫陽花のあせたる花に歌書きて
送りても見んさめたる心
カサ/\と落葉ふみつゝ思ひ見る
暗き中なる白き芽生へよ
我部屋の天井にある雨のしみ
磐若のかほの恐ろしきかな
何高が雨のしみとは思へども
頭の真上にあるが恐ろし
幼き日ざれ書したる片わきに
ペン/\草は押してありけり
色あせてみにくき花となりしかど
萩と云う名のすてがたきかな
雨晴れし後の雨だれきゝてあれば
かしらおのづとうなだるゝかな
ぜんまひの小毬をかゞる我指を
見れば鹿の子を髪にのせたや
夜々ごとに来し豆売りは来ずなりぬ
妻めとりぬと人の云ひたり
意志悪な小姑の如シク/\と
いたむ虫歯に我はな
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