誰のために
――インテリゲンツィアと民主主義の課題――
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)似非《えせ》
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 今日、日本の民主化の課題に対して、日本のインテリゲンツィアが感じている最も大きい困難は、どういう性質のものだろうか。
 ひとくちに云いあらわせば、それは、日本のインテリゲンツィアの非常に大部分のひとが、自分たちめいめいの一生にとって、日本の民主化がどんなに血肉的な影響をもつものであるかという事実をまだ実感としていない点であり、同時に、民主主義社会の建設のために、インテリゲンツィアは、歴史の上からもどの位重大な任務を負うているかということを、十分自覚していない点にあると思う。
 日本のインテリゲンツィアの性格は、よかれあしかれ、今日において独特であり、他の国のインテリゲンツィアとちがう複雑性をもっている。それは、日本の明治からの精神史をかえりみればよくわかる。日本のインテリゲンツィアの苦悩は、いつでも、その時代と人とのうちにある進歩的な要素と封建的な要素との相剋であった。どんな文学者でも、その作家が真率な生活感情と時代感覚をもっていれ
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