ンツィアは、インテリゲンツィアとして知るべきことを知っていないのである。封建的な諸現象には反対しながら、自分と社会とを封建から根本的に解放するキイ・ポイントがどこにあるかということについては、実に信じられないほど僅かしか知らず、漠然としかしらず、しかもその僅少な理解と漠然たる翹望は、今日、ちっとも民主的でもないし、正直でもない政権の頑迷執拗なねばり存続によって、けがされつつあるのである。
わたしたちのぐるりの手近い現実のなかに、美しい、模範となる民主主義の見本は見えていない。それがはっきり一般の人々の眼と心に映るまでに、海外との自由なゆききはまだ出来ない条件にある。そのために、インテリゲンツィアの気分の中には、民主主義の課題さえ、そとからあてがわれたように思って、何となし、その手にのるものか、という風な眼つきさえも見える。自分の存在を、自分の発言を社会にのばしてゆく道として、自分自身の運命の展開の方向として、自身の内なるものの発露としての民主的要求が自覚されていないのである。
そのために、自分の問題としての民主主義がつかめないとともに、日本の民主主義のために自分がどういう存在である
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