程で、奴隷という働き手が出来、その労働で富が蓄えられ、耕作・牧畜・その他の固定した土地からの収穫がふえるにつれて、部落の男、父親が、その財産の管理者として権力を発揮しはじめた。女は、その財産をうけつぐための子供をうむものとして、男の子のもたらして、としての意義から見られるようになった。彼等は、家畜の純血をこのんだ。今日でもサラ・ブレッドが珍重されるように、ましてや自分の大事な宝物と思われる財産のゆずりうけをする男の子は、厳重に、父親からのサラ・ブレッドでなければならないと思われて来た。
婦人に対して、社会が、生存の基本になるモラルとして、貞操を要求しはじめた第一歩は、私有財産というものが人間社会で権威をもちはじめた時期と歴史の上で一致している。そして、婦人は、世界史的に、原始の自然な女としてののびやかさを失い、家長、その父、その兄、その良人、その息子に従属する存在となり、一種の私有される家財めいた存在となったのであった。
こうして読めば、これは実に太古の社会史の一節である。人類の祖先たちに属する話というこころもちがする。ところが、このようにしてはじまった婦人の社会的地位の決定は、お
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