どろくべき延長で今日もなお地球の大部分の文明国においても本質的には変化させられないままで来ているのである。
日本が今やっと民法における婦人の地位の改良に着手した。日本が近代資本主義の国として出発したとき、既に改正されるべきはずであった資本主義社会の枠内での婦人の人権が、今日ようやく認められて来た。そのくいちがいの大きさ。即ち、明治からの七十年間近くが半封建のかげを日本の婦人の生活の全面におとして来ていた。「家」という藤村の傑作がある。そういう文学作品の表題は中国文学の中と、日本文学の中にしかないだろう。バルザックは「人間喜劇」をかいた。しかし、日本の文学の中には「家」がある。鴎外の歴史文学の卓抜した諸作品には、「阿部一族」のように殉死という忠節の表現さえ、「家」を守る武家の痛ましい封建的な経済事情によるものであることを鋭く描き出した。婦人は「家」に属し、その利害に応じて一生を費し、「家」のために貞操を強要された。「家」の所属品として、きずのないことを求められつづけた。しかも、封建の女の生涯に「家」というものは何であったろう。「女は三界に家なし」無限の悲哀を誘うこの現実と、生殺与奪の権
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