て行く。
 背が低く左右に形よく拡《ひろ》がった褪紅色の下に台があお向にひっくり返って居る。
 何とか云う事はなしにつり合った奇麗な景色に見える。
 土間で、
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「おい、糸おくれな。
[#ここで字下げ終わり]
とさっきの男が云って居た頃はもう雨は音もない。
 木の葉から葉へと落ちる雫の音があわただしい通り雨の後を不器用にまとめて行く。



底本:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年12月25日初版
   1986(昭和61)年3月20日第5刷
初出:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年12月25日初版
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2009年1月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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