だけの台だからそんなに広くない土間に五つ六つのが入るはずもなく私の部屋の長い廂《ひさし》の下へも一つ持って来た。
 誰も居まいと思って居た処に私が居たんで二人は少なからずへどもどして敷居とすれすれに台を置いて頭を持ちあげる拍子に隅の方へ入って居た方のが上の窓の木で頭をぶった。
 私は失笑《ふきだ》しそうになったのを辛《よ》うやっと知らん顔をする。
 だまって顔を見合わせた二人はそそくさと出て行って庭の中で雨にぬれながら押し出された様な声で笑って居た。
 又私の居る処へ来て玄関の土間へ声をかける、
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「どうにかして、もう一台だけ入れないかい?
「どうして入れるもんかい、馬鹿な。
 来て見ろよ、もうきちきちだよ、
 そこで出来るだろう。
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 向うの窓をあけて私の部屋の廂を見る。
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「駄目なんだよ、
 此処に石が有るから。
 彼方《あっち》へ廻ったら濡鼠だ。
「どうにかしてやるから待ってろ。
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 首を引込めて仕舞った。
 二人は道具を入れた小さい行李《こうり》の様なものを楓の枝ごみの葉かげに置いたり散
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