実に此上ない悲しい辛い事であった。
私は学校へ行かないと駄々をこねた。
最う知って居る事を習いに学校へ行くよりお叔父ちゃんのお話の方がためになると理屈を並べたけれ共とうとう叔父が学校へ迎に来て呉れると云う約束をして貰って出掛ける事になった。
私は行く道から帰りの事を考えて居た。
そしてそれからの三時間がどれ位ノロノロと馬鹿らしく立って行った事か。
先生のお辞儀が済むと狭い出入口で前の子を押しつける様にして馳け出して見ると、いつも女中の立って居る所に今日は約束通り叔父が笑いながら待って居てくれた。
私は笑み崩れながら跳び付いた。
そうすると叔父は私の頭を押し叩いてくれた。私の満足は頂上に達して踊る様に歩き出そうとすると、今までの様子を傍に立って珍らしそうに見て居た私よりズーット大きい男の子はいきなり賤しいかすれ声を立てて、
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「ヤーイ、ヤーイ、チャンコロヤイ
男の癖に髪を長くして居やがらあ。
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と云うと赤んべーをしてどしどし逃げ出した。
私は非常に驚いた。
そして間誤付きながら叔父の顔を見ると、子供ながら動かされた程だまっ
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