、家や、私のお噺の国に住わせたい様な人が小さくチョコチョコと働いて居るのが見られた。
 私があっけに取られて居る後から追い付いた叔父は私と並んでその※[#「涯のつくり」、第3水準1−14−82]のとっぽ先に腰をかけた。
 けれ共私は、自分の足の先が宙に浮いてブラブラして居るのに気がつくと、地面ごとあの下の方までころがって行きそうな不安や、若し此の草履を落したら誰があすこから拾って来て呉れるかしらと思うと、気味が悪くなって、ジリジリと後へ下って傍の草地へ座ってしまった。
 叔父はすぐそばに見える山について種々の事を話してくれた。
 自分がまだ子供だった時夜足駄を履いて登った事があって、天狗が居ると云う事だと聞くと私の驚きは頂上になった。
 赤面の棒鼻をした白髪の天狗が赤い着物を着羽根の団扇を持って何処の木の上に止まって居るだろうと、只なだらかに浮いて見える山の姿に目を凝した。
 勿論偉い天狗様は見え様筈もなかったけれ共、叔父は天狗の事から又神様の事を話し出した。彼は非常に興奮した口調で殆ど叱責する様に私には分らない種々の事を説き聞かせた。
 そして終には、教会の説教台に立って、幾百かの聴
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