りした茶色の幹を輝かして立って居る一群の木々の間からは真紅の小さい葉どもがチラチラして、その奥の奥からはチチチチチ、チチチチチと云う小鳥の声があっちにゆったり落着いて居る山の方まで響いて行く。
 私は歓びと驚きで胸が張ち切れそうになった。
 太陽のよっぽど近くまで来たのではあるまいかと思った程四辺は明るく金茶色に輝いて、天は私が爪立てたら触れそうに感じられた。
 静かに分けて行くと、黒い丸い小さい実をつけたり、御飯粒の様な凋んだ花を付けた高い草が私の胸の所で左右に分れて、ブーンと風音をたてながら小虫が飛び出したりした。
 私はうれしさに我を忘れて一気に向うまで馳け抜けて見ると、丁度カステラの切り目そっくりな※[#「涯のつくり」、第3水準1−14−82]《がけ》が目の前に切ったって居る。
 私には見当もつかない程低い低い下の方から先[#「先」に「(ママ)」の注記]ぐの足元まで這い上って居るその※[#「涯のつくり」、第3水準1−14−82]の面は鋭い武器で切られた様に滑らかそうで、赤土の堅い層の面をポカポカなそれより黄色い粉の様な泥が被うて居た。
 そこからは弟達の玩具の通りな汽車の線路や
前へ 次へ
全39ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング