覚えていない。私はきっと又母に手をもち添えられて、夜の燈の下で遠いところの父へ、その礼の手紙をかいたことであったろう。この本のほか、父は子供たちに折々様々のものを送ってくれた。両手にもつ柄のところに鈴のついた繩飛びの繩だの、臥かすと眼をつぶる人形だの。そういう箱を開いたとき、芳しく鼻をうった一種独特の西洋の匂いだの、その時分は全く珍しかったティッシュ・ペイパアのさらさらした手触りだのを、今も鮮明に感覚に甦らすことが出来る。
[#ここで字下げ終わり]
書簡(二七)
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
註。この時分の三人の子供達あてのエハガキの英文宛名は、大きい字で
[#ここから1字下げ]
Three little Froggs
in
Japan
とかかれている。
[#ここで字下げ終わり]
書簡(二八)
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
註。この写真が、あのコダックでとられたのであろうか。父が帰朝した日は雨ではあったし、子供の心に大きすぎる感動の数々で、私は白麻の洋服を着て、くたびれて、横浜から東京までの汽車の中
前へ
次へ
全20ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング