ズムを充分に発揮すれば「闘える天使」に語られている理性と心情との対立は、互に水掛論をする対立としてのこったままにはいない筈である。そのような社会の客観的事実と個人の運命との矛盾に傷み苦しむ心情からこそその原因を探求せずにおれない情熱が湧く。理性の活動がよびさまされる。そして更にそのような人間としての惨苦を減らすための努力に歩み出さざるを得ない気持に高められ、統一されるものなのである。ここへ到達した時こそ、バックの作家的輪廓は一層大きくなり、人類に貢献する文学としての質においても歴史的なものとなり得ると思うのである。[#地付き]〔一九三七年七月〕



底本:「宮本百合子全集 第十一巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年1月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
親本:「宮本百合子全集 第八巻」河出書房
   1952(昭和27)年10月発行
初出:「婦人文芸」
   1937(昭和12)年7月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年2月17日作成
青空文庫作成ファイル:
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