出ていた。七八人の男女が表に出ている写真を看ていた。通りすぎようとすると、友達が、
「一寸」
と私の腕を控えた。
「この麻雀というの、こないだの蜂雀の真似じゃあないこと――そうだ、滑稽だな、澄子の麻雀とは振っている。一寸立ち見をしないこと」
私は、日本映画は嫌いなのだが、蜂雀を麻雀とこじつけた幼稚なおかしさや、澄子がどんなに真似をするのかという好奇心に釣られた。垂幕《たれまく》をあげて入ると、中は満員であった。やっと、二人が立つと、すぐ麻雀が始まった。蒲田で、澄子その他が麻雀をして遊んでいると、その遊戯を知らない何とか君《くん》という、ひどく太い眉毛の若者が傍のソファで仮睡をし、夢で女賊マジャーンに出会するという筋なのだが――マジャーンが、スワンソンの蜂雀通りの扮装でスクリーンの上に蜂雀通りの順序で現れると、私共は思わず笑い出してしまった。小柄な、くくれた二重顎の一重瞼の眼付から笑う口許まで、ひどく陶器人形じみた顔付の澄子は、何とうまくスワンソンの真似をすることだろう。さも悪者らしく、巻煙草の横くわえで、のっそりのっそり両手をパンツの衣嚢に肩をそびやかして横行するところから、あの両肱
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