をぐいと持ち上げる憎さげなシュラッギングまで。堪らず私を笑わせたのは、そんな悪漢まがいの風体をしながら、肩つきにしろ、体つきにしろまるでふわふわで、子供っぽくて――謂わば小さな子が大人の帽子でもかぶったようなところのあることだ。
真似が上手ければ上手いほど可笑しい。自然に溢れる滑稽は、眉太き青年旅行家が殴り倒され、麻雀の保護を受け、麻雀が若者に参る頃から頂上に達した。階上で怪我した若者の看病をするそのまめまめしさ、動作の日本女らしさ、澄子は気がつかず地で行っている。階下では小泥棒共が、騒ぎ立てる。麻雀は彼等を籠絡して、可愛い眉太男を守らなければならない。そこで二階の踊場へ姿を現すと、愕然として、麻雀は自分が麻雀だったのを思い出したらしい。さて、とスワンソン張りにポーズし、眼瞬きの合図をし、シュラッギングをし、さも図太い女賊らしくテーブルに飛びのって一同をさしまねく。――そのうつり変りの間に、何とも云えず愛嬌があった。可愛ゆさに似たものがこぼれる。
段々監督が箍《たが》をゆるめ、馬鹿らしいちゃりを入れ出したので、終りまで見る気がなくなったが、私はそこまで可なり愉快であった。けれども、
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