んて何がわかるもんでございますか、
人がよくって年中だまされて損ばっかり致して居るんでございますもの。」
「きまったって云ってたよ。」
「ええ、きめてしまったんでございますよ、
私になんか一度一寸話したっきりなんでございます、軍人なんてこわらしい様でございますわねえ。」
「同じ人間だもの、
まさか取って喰おうって云うまいし。」
「でも何が何だかわかるもんでございますか。
男なんて、
女をだます事を商売にして居るんでございますもの、
ほんとうにどうしたらいいかと思って居るんでございます。」
「行った方がいいだろうよ、
まだ十代なら何だけど――
もう五なんだろう。」
「はい。」
「そいじゃあどうしたってその方がいいよお前、
それにかなり年を取った人だって云うもの。」
「でもほんとうに一度も顔さえ見た事のない人の所へなんか参るのは安心されない気持がするんでございます。
先の『何』なんかは小さい時っからしたしくして居て私の体の弱い事なんかは百も承知の癖にあんなだったんでございますもの。」
さきは少し顔を赤めながら口を引きゆがめる様にして云った。
二度まであんまりよくない
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