更かすが朝もそんなに早くなし、嫌いな事さえしなければ怒られもしず時々は友達みたいに打ちとけて話す事さえあるほどだからあんまりい気持はしないにきまってる。
 新らしい女が来れば当分お互にさぐりっこをする、気に入らない事をする、
 かんしゃくを押えて一つ一つ細っかい事を教えなければならない、
 そんな事を思うと千世子はほんとうにいやになってしまった。
「帰す帰すって云ってとめておこうかしらん。」
 こんな事さえ思った。
 それでもまさかそんな事も出来ないから遠縁の親類へいつもの注文通り、
 二十二三の少しは教育のあるみっともなくないの
をたのんでやった。
 も一方先に頼んだ方のが無いと悪いと思ってであった。
 父親が帰ってから、さきは、泣いた様な眼をして千世子の書斎に来て千世子の椅子のわきにぴったりと座ってしみじみとした口調で話した。
「ほんとうに私どうしようかと思って居るんでございますよ。」
「何を?」
「今度の話でございますの、
 家の者はそりゃあ、乗気で居るんでございますけれど私は何だか気が向かないんでございます。」
「でもお父さんが大丈夫だって云うんならいいじゃあないか。」
「父な
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