った人たちも、今日では個別的な自我そのものがそれだけではファシズムの轍にひしがれることを十分知っている。政治の表現は複雑であり多様であって、人民的政治の表現というものを決して今日まだある社会行動の型にはめきる必要はない。文学者は文学者の道を通って、科学者は科学者の道を通って、人間の理性の到達点に合流して世界平和に対する大課題に協力することが出来る。「専門」ということをいいたてて、それぞれの小道の中に引っ込んでいることは、客観的にはその人自身さえも望んでいない力に協力することになってしまう。
日本ではデモクラシーの道幅が如何にもせまい。それをひろげる為に、日本にはよその国と違った強い強い前進的な勢力の結集が必要である。それは民主的な人を民主的に生かす為ばかりでなく、ファシストになりたくない人をファシズムから守る為にも必要である。すべての人は生きる権利がある。このことは、すべての人が人間として生きる権利があることにほかならない。そして人間として生きる権利を守ろうとする時、これまでの文化人と勤労者の間に偏見的に置かれた差別は当然消えてしまう。どんな文化人が物価七割の値上げから自由であろう。
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