前進のために
――決議によせて――
宮本百合子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから3字下げ]
−−

 このたび、常任中央委員会によって発表された日和見主義との闘争に関する決議は、プロレタリア文学運動が今日到達したレーニン的立場に立っての分析の周密さ、きわめて率直な自己批判の態度などにおいて、非常にすぐれたものである。この決議の精神は、作家同盟の全活動を今後ますます正しく活溌化するばかりでなく、おそらくは他の文化団体及びその指導部にとっても何らかの意味で示唆するとこがあるであろう。
 私は満腔の信頼とよろこびとをもってこの決議に服する。そして、自己批判によって一層高められたレーニン的党派性の理解に立って、この決議の実践、大衆化のために努力し、同時に、わが陣営内の最も害悪ある敵、日和見主義と、いよいよ正しく、譲歩するところなく闘争することを、自身の課題とするものである。
 全同盟員によって支持され、実践されるであろうこの日和見主義との闘争に関する決議の大衆化に当って、私は同志小林多喜二の業績を、新たな尊敬とともに思い起さずにはおれぬ。
 同志小林は、プロレタリア文学の一部に現れた日和見主義に対しては、率先してそれとの闘争に立ち向った。彼は連続的に発表された諸論策において、日和見主義の社会的階級的根源をあばき、作品について具体的に指摘し、日和見主義との闘争がいかに政治的重要性をもつものであるかということについて、鋭く大衆の注意を喚起した。同志小林が卓抜なボルシェヴィク作家である上に、優秀な理論家、指導者としての最近の発展は主として日和見主義との闘争に関する諸論文の中にうかがわれたのである。このたびの決議のレーニン的基礎づけ、思想的基礎づけの半ばは、同志小林が全力を傾けて実践した日和見主義との仮借なき闘争の成果によって行われたと云っても過言ではないであろう。
 同志小林の不滅の精神は、今日われわれが正しい決議を発表し得るに至った全過程を生々と貫き、更に決議そのもののうちに燦然と輝やいているのである。
 万一、決議が、同志小林の英雄的殉難を機とし、謂わばそれによって心を入れかえた常任中央委員会によって懺悔的に発表されたものであるかのように考えられるとしたら、それは事実を歪めるものであるし、ま
次へ
全13ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング