第一回日本アンデパンダン展批評
宮本百合子

 こないだ久しぶりで第一回日本アンデパンダン展覧会を見て、断片的ですけれども、いくつかの印象が残りました。やっぱりあれは面白い展覧会であったと思います。よかれあしかれ、美術の外の分野に働いている私のような者にもいろいろ考えさせましたから。
 あの展覧会には、十何年か昔、日本にプロレタリア文学の運動と一緒にプロレタリア美術という運動があったころ、その指導的な活動をしていた旧「ヤップ」の方々の組織される現実会の会員の作品や、その頃はそういう団体には属していなかったけれども、今日古い画壇の空気にあきたりなくて、民主的な日本の社会の推移とともに自分の芸術を新しく発展させて行こうと計画している方々の作品、そして職場からの作品もありました。
 最後の日にほんの二、三時間見ただけですから、ずいぶん杜撰な印象だろうと思いますが、全体からうけた印象では、この展覧会に出品している方々は、それぞれの個人、それぞれのグループで、熱心に、古い客間の装飾用としての洋画から、ほんとうに今日に生きる私たちの生活の感覚と、そこにあるさまざまの主題を芸術化そうと努力されている
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