がら短い時間のうちに、御自分の思っていたよりも早く、芸術家としての彼女の前に積みあげられた乗り越えるべきものを、まともに踏みこえてみようと言っておられました。
あの展覧会をみたあとで、赤松さんのこの率直な勉強の話をきいて、やっと先が明るくなりました。小市民的なヒロイズムそのものが人民の前衛ではありません。小市民の中にある客観的な、自己陶酔でない、歴史とともに前進してゆく進歩性、つまりブルジョア・リアリズムを着実な生成の過程で発展させてゆこうとする進歩性が、社会と芸術の前衛たりうるのではないでしょうか。前衛という言葉の意味は、歴史性のなかでまじめに考えられるべきでしょう。小市民的な主観性の中での先端、というような意味ではないと思います。文学においても、美術においても、小市民的な先端から、ほんとうに歴史を押し進めてゆく社会的階層の前衛としての本質に移ってゆくことは、芸術以前の生活において容易なことでないのと同じように、芸術の上では、おそろしく根気づよい過程が要求されているのだと思いました。
職場からの出品は、この展覧会でも、他の場所に陳列された絵からうけた印象も、生活力には溢れている
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