ったと云う人。不明、然し、この下でバク発するかと思い、而も逃げ場もないときの心持はまともに味った。高崎、大宮以後十二時間の延着で、田端に夜の(五日)九時すぎつく。金沢からのり合わせた男、荷もつはあり、自動車はないと云うので、自分がカイ中電燈をもって居るのをだしに、あまり智識もなさそうな男二人をさそい、荷を負わせてつれて行く。自分はAと、もう一人信州の男と、三人で、着剣の兵に守られた処々を通り林町の通りに出、門を見、自分にかけよるきよの声をきく、父上の無事を知ったら何とも云えない心持がした。西洋間に尻ばしょりのままとび込むと渡辺仁氏が居らる。倉知貞子叔母、死んだらしいとのこと、国男無事のよし。Aと二人、青山に行けずとまる。
六日
A青山。鎌倉から小南の兄かえり、叔母上、季夫圧死し、仮埋葬にした由
七日
午後A来。荷物半分負うて行く。
八日
自分基ちゃん、歩いて青山に行く。
歩いて林町より三時間かかり青山に来る。やけ野原(イキ坂、神保町、九段)の有様、心を**にす。五番町英国大使館の前に、麹町区役所死体収容所が出来、あらゴモで前かけをした人夫が、かたまり、トタンのかこい
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