が、駅に下ると、金沢の十五連隊の兵、電線工夫等が大勢、他、救済者が、皆糧食を背負い、草鞋バキ、殺気立った有様でつめかけて居る。急行は何方につくのかときいて見ると、ブリッジを渡った彼方だと云う。A、バスケット、かんづめ包をふりわけにし、自分は袋、水とう、魚カゴを下げ、いそぎブリッジを渡って、彼方できくと、彼方側だと云う。又、今度は時間がないのでかけて元の方に下り、人にきき、元と同じ側に待つ。金沢の兵、電気工夫等一杯、頭をなぐられなぐられやっとのる。自分席あり、A席なくバスケットにすわる。海軍の人の荷物を人づてに渡す。軽井沢近くまではどうか斯うが無事に来たが、沓《くつ》かけ駅から一つ手前で、窓から小用をした人が、客車の下に足を見つけ、多分バク弾を持った朝鮮人がかくれて居るのだろうとさわぎ出す。前日軽井沢で汽車をテンプクさせようとした鮮人が捕ったところなので皆、さむいような、何とも云えない気がする。駅で長いこと停車し、黎明のうすあかりの中に、提灯をつけ、抜刀の消防隊がしきりに車の下をさがし、一旦もう居ないと云ったのに、あとでワーッとときの声をあげて野原の方に追って行った。居たと云う人、居なか
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