ようとしていることに立腹を示したものであった。
 鈴木さんばかりがそう思うのではない。私はその文章をよんだ時はっきりそう思った。私たち皆そこまで現実を見ているし、地方の人は猶更はっきりそのことを思っているにちがいないのである。
 この頃真理運動ということを云い出して、都下の中途半端な学生などの間に或る人気をあつめはじめている友松円諦という坊さんは、文芸春秋の新年号に「凶作地の人々に与う」という題で一つの意見を公にしている。
 友松は、東北地方の飢饉が今年にはじまったことでないということについて、その地方における地主と小作との関係の中に原因をつきとめず「彼らは恵まれた自然に慢性になっているらしい。ここに私達がまじめに考えなくてはならぬ点があると思う」と、東北における農民の窮乏根治策のために「農村真理道場」というのをそういう地方に設けようとする広告を発表しているのである。そして、自分が骨を折って若い男女の冬期間だけの出稼ぎを援助し、「村民の気分を作興して」例えば娘の身売りを平気でさせる「貞操に関する観念の極めて鈍感であることを」改善しなければならぬ。「真理道場の第一の使命を農村文化の向上に
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