孫悟空の雲
――『近代文学』十月号平野謙氏の評論について――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)軌道《レール》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)新しい民主文学のつくりて[#「つくりて」に傍点]たちは、
−−
『近代文学』十月特輯号に平野謙氏の「労働者作家の問題」という講演筆記がのせられている。
その話の中で宮本百合子について多くの言葉が費されている。けれども、わたしへのそのふれかたの中には、わたしが迷惑し、聴衆や読者の判断があやまられるばかりでなく、もっと複雑な誤解や事実とちがう憶測を刺戟する要素がふくまれている。それらの点をはっきりさせたいと思う。
平野氏の話のきっかけは、『新日本文学』七月にのったわたしの「平和運動と文学者」という講演記録に見出されている。これは去年の十二月二十五日、新日本文学会が主催したファシズム反対の文芸講演会で話したものだったが、編輯上の都合があったと見えて、半年もおくれて掲載されたものである。
ファシズムとのたたかいも観念の中で課題とされているだけでは現実の力ではない。文学そのも
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