窓からの風景(六月――)
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符二つ、1−8−75]
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晴
○しっかりした面白味のある幹に密生して いかにも勁そうな細かい銀杏の若葉。
○その窓からはいろいろな色と形との新緑の梢が見わたせた。
その奥で普請がやられている
金づちの音や木をひく音は朝から夕方まで響いた。屋根をくまれたりする新しい木の色は新緑と照り合って互にすがすがしさを増す眺望である。
○遠くの空にはあっちに一つ、こっちに一本クレーンがある。
千駄木小学校と郵便局の立つの
林町にクレーン※[#感嘆符二つ、1−8−75]
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〔欄外に〕
○八つ手、
○食べたいような柔かい柿の木の若葉
○房々とした楓、
或楓の赤い実
○高い青空をはいて靡いている(東北の風に)さいかちの古い飾羽根のような梢。
[#ここで字下げ終わり]
五月二十日 雨もよいの湿っぽい午後 五時前
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