繊細な美の観賞と云う事について
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)賜物《おくりもの》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)私達のみなり[#「みなり」に傍点]に
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「春」と云う名のもたらした自然の賜物《おくりもの》の中にすべての美がこめられて私達の目前に日毎に育って居る。
晴ればれと高い空を見ながら木蓮の白い花が青と紫の中に浮いて居るのを見ながら、私の心は驚くばかりの美を感謝もし讚えても居る。
「美」と云うものを幾度も幾度も口に云い筆先に現わすのはあんまり好い事ではないかもしれないけれ共私はだまって居る事は出来ない。
嬉しい時に小声な歌を唄いたくなる様に低く小さくそしてつぶやく様にでも私は何か云わなければならない気持になって居る。
すべての物の美くしさと云うものは、
大きくまとまった美くしさ と、
相当に細っかい美くしさ と、
又は一目見ては人の心に何にも与えない様なものの中に棲む美くしさ、
と云うものが有ると思う。
この分け方は極く大ざっぱなことだけれ共、その中にも亦色彩によって感じる美くしさ、
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