連想によって美くしいと思うものなどがどの美くしさと云う中にも入って居ると思う。
すべて大きくまとまった美と云うものは、多くの場合その色彩の工合で美くしいとも思い又は腹立たしいほど見っともなくも見えるものである。
私達のみなり[#「みなり」に傍点]に対する注意と用意が必要で、又他人の身なりを見る時と同じ気持がいるものだと思う。
かなり細っかい美くしさ――私はわざとここにかなり細っかいと云う言葉が必要だと思うから入れる――に於て我国古来の刺繍、蒔絵などは成功して居ると思う。
一目見ては人の目を引かないものの中にひそむ美は、私がこの上もなく大切にも思い又嬉しくも思って居る美くしさである。
この美に対して私は無条件な細かな美と云う事が出来る、繊細な美と云う事が出来る。
極く精巧な細っかい美くしさではあっても、偉大な魅力と威をもって我々の上に高く輝いて居るものである。
この美は多くの場合には自然の中に生きて居る、そしてどこにでもかしこにでも行きわたって居るものである。
何事につけても柔かくシンナリとあつかって呉れる母親と同じ様に、この美は我々の心を笑わす事も涙をこぼさせる事も出来
前へ
次へ
全7ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング