さないからじゃないか、というところへ流れよりそうである。
そうなったとき、農村ではどうかと想像してみる。農村とても、決して平穏に彼等の拒絶をしかねているであろう。当然、ごたつく。その結果、次の当然として、強制買上供出としての強権以外の強権が発動するだろう。あちらも、こちらも、大ごたつきに揉めて、つづまるところは、何かと云えば、それを、きっかけとして、農村では農民の自主的な組織や活動が圧殺され、都会では市民が所謂《いわゆる》鎮圧されてしまう。やっと全人民が一歩をふみ出した民主の試みは、二歩と歩まぬうちに、まことに見事に、旧勢力である反動政府のもくろみどおり、足を折り、手をもがれて、人民はまたもや、自分の声を失ってしまうのである。そういう不幸がおこったとき、最悪の点は、農村人と都会人との感情の疎隔である。この疎隔さえあれば、支配権力にとってこわいことはない。何故なら、人民の結集する能力は、最も根本で二つに裂かれてしまうのであるから。
このような考えのめぐらしかたは、或人にとって、あまり裏まで穿ちすぎた辛辣さと思えるかもしれない。けれども、決して穿ちすぎではない。今日の現実の内包している
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