諸事情を、真に人民としての洞察と無私にたって観察すれば、こういう幾本かの筋が、くっきりと混沌の中から浮んで来るのである。
私たちは自分たち自身を過りにおとしいれ思わぬワナにはめないために、食糧管理委員会の運営の方法について正しい知識をもたなくてはならない。この、民主的な自主の委員会は各区、各市、各地方と全国のひろがりで、到るところにつくられてゆくものである。そして、現実の食糧管理に当るときには、食糧供出、配給、その他必要な機構に関係をもつ行政権を、この委員会として掌握しなければならない。板橋の場合、発見した隠匿物資は、配給所がごまかしていたものではなかったのだから、委員会は、先ず連合軍に申し出たらよかったろう。連合軍は或は政府に通告し、政府は営団に一旦渡せというかもしれぬ。そこが区民としては虫が好かない点だったろう。虫のすかないのは同感だが、虫がすかないからと云って私たちは、素朴な、口実を与える方法で自分たちの大局的自主性を失おうとは思うまい。そこが談判のしどころであろう。その場の必要な行政的権限を確保しつつ、前わたしとして渡せば、営団のちょろまかす範囲はいくらかへると考えられまいか
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