られまい。このごろの農村で、農民組合その他農民の自主的な団体のないところは少かろう。
 この二つの条件は、日本じゅうの村々で、農民たちがこの問題を中心として集り、相談し、協議し、決定して、一つの一致した結論を導き出すだろうということを予想させる。一致した意見が、凡《およ》そ政府案支持でなかろうという点も見とおせる。
 米が、二割しか集っていない。各大都市の人口は配給米をもって命をつないでいる。その米のストックが乏しいところへ、農民が強制買上供出反対で、米俵をつんで東京、大阪その他の駅に入るべき貨車が、きょうも、明日もと空っぽであるとき、大都市の住民の不安はいかばかりであろうか。重大な事態をひき起すであろう。その重大事態の核心をなすものは何かといえば、食糧の非常手段による調達であろう。住民の非常手段による調達というとき、この間まで日本人の頭に浮ぶのは、往年の米騒動ばかりであった。しかし、今日では、人民の食糧管理という観念が加って来ており、そこに、板橋区の実例があった。すこし、実際的に心の働く人民なら、ここのところに新しい社会的なものの生じていることを理解するのは当然である。
 仮に、そう
前へ 次へ
全11ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング