或は穢されるということのあり得る事実も明白である。
 進歩党は、過般、築地の待合金田中へ、数人のお歴々女史を招待した。そして、参集した何人かの女史に、党内の重要な椅子を提供した。
 金田中といえば待合政治の根城として、誰知らぬ者はない。女も古参女史になれば男と同等、政治談合を待合でやって冷汗も掻かなくなるものかと、笑ってすぎることであろうか。
 戦争の惨禍と、人民生活の犠牲。なかでも弱い女の蒙っている打撃の致命的な深刻さを痛切に理解し、一刻も早い適切な処置を思うなら、戦犯で潰れた反動政党へ、どうして女が入られよう。家庭を奪い、愛する男たちを殺し、傷け、今日の日本をもたらした、その戦犯の仲間に、女である、という唯一つの理由からだけでも、入ることを愧《は》ずべき十分の根拠がある。
 フランスの婦人が参政権を得たのはつい先頃のことであった。三十数名の婦人代議士が選出されたなかに多くの未亡人がある。これら喪服をつけて立つ婦人代議士は、再び戦争というもののない世界のために協力し、参加しようとして立っている。裂かれた胸と血涙とをとおして、平和をもたらす決心かたく、女性の叫びとして立ったのである。

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