人間の道義
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)愧《は》ずべき
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)古参婦人指導者[#「指導者」に傍点]たちの堕落を、
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一
婦人の生活が頽廃しているということがいわれはじめて、暫くになった。性的な面で、特に大都市の婦女子の生活が不規則になり、崩れているということについて注目されて来ている。それは私たちが現に目撃している様々の現象を綜合して結論されることでもある。同じ女の一人として、切なく、苦しく、視線をそらすような場面もあるのである。
けれども、そのような若い女性の生活の崩壊は、どういうところより起って来ているのだろうか。その点にこそ最も深く真面目な探求が向けられるべきではなかろうかと思う。現れた結果だけつかまえて、是非を論ずる方法は、現実的でもなければ、人間らしい方法でもない。
世界の歴史は、被うところなく告げている。戦敗後のインフレーションと食糧危機に当って、その国の無産婦女子の生活が惨憺たるものにならなかった例は、ほとんど皆無であることを。
さら
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