の経済的活動の上にも、政治生活の上にも絶対の権力をふるってきた僧侶貴族一家一門の首領たちの権威は、彼等のやり方と共に若い時代にとって重荷になってきた。発展を阻むものになってきた。近代の歴史の担当者として現れたブルジョアジーは、王権を否定して市民(ブルジョア)の権利を確立すると共に、ルーテルを先頭に立てて、法王に統率され経済的政治的に専制勢力の柱である天主教の仕組を否定した。そして、市民一人一人の精神の内に在る神としてのキリスト教新教を組織した。そして権力のために犠牲にされることのない市民の個々の家庭の尊厳を主張しはじめた。同時に両性の清らかな愛による互いの選択と、その神の嘉《よみ》し給う結合の形としての結婚を主張した。
ところでこの「神聖なる結婚」「純潔なる家庭」といいながら、資本主義社会の冷酷な利害関係と、持つ者持たない者との関係によって、現実にはどんな矛盾がそこにあらわれたかということは、夏目漱石が深い知識と研究で物語っているイギリスの十八世紀の文学史を見るとよくわかる。世界で最も早く産業革命を行い、市民の権利を確立させたイギリスは、新教の本場となった。従ってイギリスでは、特別に
前へ
次へ
全30ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング