て、それから食事をいたします。朝の食事はいつもきまって、パンと卵と紅茶とだけです。夏は卵のかわりにトマトをたべます。
 昼はごく簡単な日本食をとります。
 夜は六七時頃、三度のうちでは一ばん御馳走のある食卓にむかいます。

        嗜好

 わたくしは支那料理が非常に好きです。日本料理も西洋料理も、おいしければ大好きですけれど、まずい西洋料理よりは、たいしておいしくなくとも日本料理の方を好みます。
 魚類では、夏なら「あらい」にしてたべるものがすきです。けれどもわたくしは一体、お魚がひどくすきというのではないので、牛肉などなら毎日でも結構ですけれど、お魚をそう続けられては見るもいやになります。肉類にしても、東京の堅い鶏肉はあまり好みません。特に好物といえばあい鴨[#「あい鴨」に傍点]です。
 野菜では、胡瓜とかサラダとか、見た眼に新鮮な感じのするものを好みます。殊に五月時分、はしり[#「はしり」に傍点]の胡瓜をなまのまま輪切りにして塩をつけてたべるのは、毎年その季節の楽しみの一つです。
 嫌いなものといえば、何よりも先ず納豆です。北国の人は一体納豆を好むようですが、わたくしは、
前へ 次へ
全9ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング