ぞは、レファインされない嗜好なのでしょう。
果物よりも甘いものの方がずうっと好きです。仕事に疲れた時なぞ、甘いものでさえあれば何んでも構わずたべる位です。甘いものといえば、いつかたべた京都の「川村」の栗ようかんのおいしかったことは未だに忘れません。
服装
洋服は形がいろいろあって、それが着る人の性格を現わせるから好きです。気に入った洋装をしてみたいと思いますけれど、その機会がないので、この頃わたくしは和服ばかりです。家にいる時からして、筒ッぽの袖の広いのを着ています。着るものや持ちものについての趣味をいえば、例えば、一見して、帯とか傘とか羽織とか、それらの一つが際立って目につくというような拵えはいやです。そういういやな刺戟のない、全体がまとまった感じの身なりが好きです。けれども、そうはいっても、その場所とその人の装いとが合致していれば、人々個々のことはどうでもいいことです。
動物
好きなのは先ず犬、馬、牛――牛もミルク・カウェーもいいけれど、朝鮮牛も悪くないと思います。そのほか蛇や毛虫なぞにしても、たいして嫌いではありません。尤も、そばにいられてはいやですけれど、遠くから見るなら別段いやとも思いません。毛虫なぞ綺麗じゃありませんか。そういえば、どんなに綺麗な蛾にしても、灯のまわりを煩《うる》さく飛びまわられては嫌いです。嫌いといえば、何よりもたまらないのはノミ。
植物
わたくしは机上に年中花を絶やしたことがありません。花はいつも小さいのを選びますが。
樹木も好きです。わたくしは樹のない家に住む気はありません。その上庭に、苔があり芝生があれば、猶更らうれしいことです。
机のまわり
わたくしの机の上には、満州辺の山羊のような、少し黄色がかった文鎮があります。それに瑠璃色の硯屏と白い原稿紙、可愛い円るい傘のスタンド、イギリス産の洋紅に染めつけた麻の敷物なぞ、どれもわたくしの好きなものばかりです。
音楽、絵画その他
近頃は音楽を聴くよりも絵を見ることの方が多いのですが、どちらも好きです。絵は、日本のも西洋のも、支那のも、素晴らしくいいものには区別なく惹きつけられます。
芝居は歌舞伎劇や文楽の人形浄瑠璃なぞ好きです。新劇は築地小劇場のものや、武者小路さんのものが
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