身ぶりならぬ慰めを
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三七年十一月〕
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『輝ク』の慰問号を拝見して感じたことの第一は、人を慰める、特に平常と異った事情にある前線の将士を真実に慰めるということは、実に、むずかしいということです。『輝ク』のこの号の共通な感情として、どっちかというと慰めるということの内容が少女小説的と云おうか、女の昔からの習慣的な或る身ごなしの面でだけとられている傾きがあります。ふだん其等の人々の書いていらっしゃる言葉づかいと、何かちがって受け身な言葉づかいで、妙に襷をかけて膝をついたり、旗をヒラヒラやって涙ぐむのが、慰めの定型のようでもある。岡本かの子さんは、近頃一貫してああいう感情表現をしていられるが、村や店先から出て行って砲火の下にいる、前線の兵士たちがあの文章をよんで何を感じ、何を理解し得るでしょうか。兵士たちは、ごく普通の市民の一人一人であり、なみの人間であり、而もそれらの何の奇もない人間が、避けがたき事情の下に万難を冒して自分の生涯を賭しているからこそ、私
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