身についた可能の発見
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)眼を瞠《みは》って

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四一年一月〕
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 今年はどんな一年として私たちに経験されてゆくだろう。
 世界の動き、日本の動きは微妙複雑な程度を増しこそすれ、決して単調平坦な明け暮れがあろうとは思われない。婦人の生活も、世界的な波動の中で更にそれぞれの国の特別な事情に左右されながら、多くの経験を重ねて行くことだろう。女のおかれている条件もひととおりのものではないのである。
 この頃、歴史について読書人の関心が目ざまされて来ている。漠然と現代の社会事情が維新時分の世相のありようと引きくらべられたりもしている。
 けれども、果して歴史はくりかえすものであろうか。
 歴史の上に、一つの国が全く同じ条件で同じ現象をくりかえすというようなことが現実にあるものだろうか。
 私たちの祖母の代が女として過した一生の絵図を、きょうの若い女性の日々にくりかえされていると私たちは思っているだろうか。私たちの一生は祖母の代とは非常にちがう
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