内容が過されるであろうし、或は母とも姉たちとも生活感情で深く違ったところをもって暮されて行くのが実際だろうと思う。
 そして、種々様々な時代としての相異があるにしろ、やはり私たちの一生は自分にとって唯一度しかないものだということに、烈しい愛着を感じ、かくされている可能を信じようとする心は変りあるまい。
 世界の歴史が激動し、国々の歴史が波瀾を重ねる間にも、私たちが歴史のために役立とうとすれば、窮極は自分という一個の女性を、最大の可能でそれぞれの道と部面とにおいて人及び女として成長させ、能力を発揮して行くことにほかならないということは意味ふかいことだと思う。
 去年は世の中にいろいろと大きい動きがあって、若い生活力に溢れた女性たちは、何かどこからか新しい潮がさし入って来たように感じ、眼を瞠《みは》って動きにそなえたけれど、その動きが具体的にどうあっていいものなのかは、はっきり見定められなかったような状況だったと思う。
 自分として改まって、さて何をどうしてよいか、ということで却ってわからなくなった気持もあって、それは決して若い女性たちだけの問題に止らなかった。女性の先輩たちの動きにその混
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