しているのである。
 このほか「全ソ作家大会報告を読みて」という諸氏の感想が『文学評論』に集録されている。平林たい子氏が、その感想の中で「社会主義的リアリズムは日本の作家の間に漫然と使用されているような超階級的なスローガンではないらしい」といって「我々の現実の再検討によって」日本の現実に即した創作方法のスローガンを要求している。
 漫然と超階級的なスローガンであるかのように作家の間に使用される影響のしかたで、意味ふかい社会主義的リアリズムの提議は日本に紹介されたのであったろうか。私ははからず率直にかかれた数行をよんで沈思せずにいられなかった。

 今日の現実の再検討については、新年に創刊号を出した綜合雑誌『生きた新聞』が、注意をひく二つの論文をのせている。村松五郎氏「幽霊ファッショ論」がその一つである。日本に純粋な資本主義独裁はないから、従ってファッシズムもない、という主張をもった社会時評である。他の一つは「プロレタリア文化戦線の見透し」北厳二郎氏である。限られた枚数の中で、詳細にふれることは不可能であるが、前者において、われわれがそれをこそイタリーとはちがう日本の特殊な資本主義発達の
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