「文学の一般のレベルがもっと高くならなければならぬのだ。だからいきなり農民に判ったりするものか、それは小説の罪ではなくて、うんといいものは判らなくていいのだ」という見解が力をこめて語られたりもしている。われわれの今日の文学が置かれている錯綜した現実がここにも見出されるのである。
 新たなリアリズムの本道を示すような健康な作品の出現が要求されているのであるが、現在の大勢では、過去のプロレタリア文学に欠けていた文学の多様性、独自性、複雑性への興味関心が熾烈である。それに連関して芸術作品の「文字の背後の雰囲気」「噛みしめて行くと」出る「凄い味」(橋本氏)の価値も注目をひいている。若い作家たちの文学的関心の現状は、文章についての問題からだけ見ても「素朴で沢山の思想を現すのが芸術の本道である」というところにまでやがて高まる。にしても、今はまだその道のなかほどにあると思われるのである。
 プロレタリア文学の多難な発展過程から見て、過去の「ナルプ」の活動にあった弱点から押しても、現在文学的野望に燃える多数の作家たちが、プロレタリア文学における独特な長所を発見しようと志し、同時に、芸術作品の構成の豊富
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