・インベルは洗煉された一人のソヴェトの女詩人で、未来派出身らしいスタイルを持った才女であった。
 彼女の作品は気が利いていた。フランスの匂いがした。けれども率直にいってそれ以上の何ものであったろうか。今次大戦が始ってから彼女の良人である映画監督者は、レーニングラードの前線で記録映画のために働いていた。レーニングラードは包囲された。モスクワにいたヴェラ・インベルは飛行機でレーニングラードに飛び立った。そして、包囲軍を撃退する迄そこに留った。当時の日記が整理されて、「殆ど三年」という題で出版された。
 その大きい経験で、インベルの才能がどのように鞏固にされ、拡大されただろう。早く彼女の最近の収穫を読みたいと思う。そこには全ソヴェトの善戦の誇りがあるだろう。真の勝利とは、どういうものであるかということを鳴りひびかせている数行があるだろう。
 私たちは一日も早くその本を手にとって、一つ一つの文字は充分によめないとしても、ここに疑いもなく、人間の理性の環飾りがもたらされているということを感じたいと思う。
 最近、何人かの新しい婦人作家が活動している。一九四三年にモスクワで出版された文化紹介の冊子
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