くれない。
そこに、彼の生きたロシアの革命的沈滞期の社会が明かに反映しているのである。
もっと後の時代でも、例えばドイツの漫画家グロッスの仕事を見ると、彼の諷刺家としての階級性がよく分る。グロッスの貪婪なブルジョア、冷酷な淫猥なブルジョア女、圧迫されながらしばられ不具にされたプロレタリアートの描写は、その辛辣な暴露で漫画界に一つのスタイルを創った。
ぞろぞろ手法の模倣者が出た位鋭いものを持ってはいたが、本当に闘争するボルシェビックなプロレタリアートはしんからグロッスの漫画を好きになれなかった。
グロッスはアナーキスト的な世界観で、階級的醜と悪とを暴露したのはいいが、暴露しっぱなしだ。このざまは何だ? それっきりでつっぱなしている。
現実に新社会を建設しようとしているプロレタリアの意志、プロレタリアートの情熱の輝きは、グロッス漫画のどこにも光っていない。
世界の階級闘争がひろい文化戦線にわたって激化されるようになってから、敵の陣営=ブルジョアを攻撃し、笑殺する武器としてのプロレタリア諷刺は、弁証法的な形で扱われるようになって来た。
対手の悪と醜とを暴露し、やっつけるぎりの消
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