て、よいならよい、悪いならわるい。もし又、はっきり分らなければ、そのとおりに、はっきり分らないと答える習慣を持たなければなりません。今すぐ返事が出来ないから、待ってくれという場合もあるでしょう。いずれにせよ、明白に責任のある答えをする習慣を身につけなければなりません。

 これまでの私たち日本人は、大事なことはみんな役所まかせで、肝腎の命さえ、自分の勝手にはなりませんでした。役所は、小さな区役所から内閣まで、一度で用のすまないのが普通です。云ってみれば、これまでの私たちには、自分で自分がままならず、自分で自分のことがすっかり分ってもいなかったのです。従って、日本人の返事の曖昧さは、世界でおどろかれる特徴の一つとなりました。私たちは、この習慣をやめなければなりません。

 はっきり返事をして、ひとの意見も落付いてきくという躾は、日本人にとって、思っているより大切です。
 ひとがものを云っているときには、わきから口を出して邪魔をしてはいけません。自分の気に入らない意見でも、しまいまでチャンときいて、堂々とそれを討論してゆく人間にならなければなりません。
 自分で考えてみる力を、守り立ててや
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