りましょう。
 自分の思いつきを大切にして、それを実現してゆく方法を、根気よく見つけてゆく人間を作らなければなりません。
 人間の社会には、いろいろの行きちがい、矛盾、醜いことがあるけれども、最後のところへゆけば、人間は道理に従って生きるものである、という、動かすことの出来ない天下の真理を、稚い心のうちに明るく、しっかりと植えつけてやらなければなりません。

 そのために母親は、自分の都合でばかり子供を叱らず、忙しくても辛抱して、とっくりと子供の言い分をきいてやり、親の思いちがいであったならば、さっぱりと、母さんが間違えていてわるかったね、ごめんよ、と云ってやることが大切です。こういう親の扱いこそ、子供にとっていいつくせないよろこびであり、尊敬であります。子供が将来、独立人としての見識をもち、同時に、美しい寛大さと、威厳を失うことのない譲歩とを学ぶ、みなもとです。
 日本が民主の国にならなければならない、その大切な毎日の発展は、こういう母たちの心がけのうちに、かもされてゆくのだと思います。

 このように明るく、親も子も同じように、道理には従うというきちんとした習慣で育てられれば、男の
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