。女の力は広汎な形で時局的な生産動員に向って招かれている。そして毎日、新聞で見る今日の銃後の女としての服装もエプロン姿から、たとえそれがもんぺい[#「もんぺい」に傍点]であろうと、作業服式のものであろうと、ひとしくりりしい裾さばきと、短くされたたもと[#「たもと」に傍点]とをもって、より戦闘的な型へ進んで来ているのである。
私たち女は一年間に自分の希望と選択とによってここまで変転して来たのだろうか。この答えは複雑である。しかし社会事情の急調な動きは一つの必然として、自覚するとしないとにかかわらず、今日の婦人全体を新しい生活事情に導き入れており、そこではより社会的な規模で新しい生活能力の発揮されることを必要としており、新たな摩擦もおのずから生じて来ているのである。
ラジオの国民歌謡は、男は国の守りとして外へ出てゆき、家を守り家業にいそしむこそ女であるもののつとめであるとくりかえし歌っている。岡本かの子さんのような芸術家は、和歌に同じような思想をうたい、女の家居の情を描いておられる。だが、現実の今日においては、家を守り子を守るためにこそ、家を外にしなければならない女の数はかえって殖えて
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