新しい文学の誕生
――若い人に贈る――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)犢《こうし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)まだら[#「まだら」に傍点]を身につけて
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文学に心をひかれる人は、いつも、自分がかきはじめるより先にかならず読みはじめている。しかも、わたしたちがはじめて読んだ小説や、詩はどんな工合にして手にふれたかと云えば、それは十中八九偶然である。そういう人は大抵よむのがすきで、年の小さいときからいつとはなしに、あれやこれやの文学をよんで来ているのだが、はじめて読んだ小説をいまわたしたちがわきまえているような意味では、小説だとさえ知らずに読みはじめたような場合も多いと思う。ふとよんだものに不思議にひきつけられ、犢《こうし》がうまい草にひかれてひろい牧場の果から果へ歩くように、段々そういう種類の本をさがして読みすすんで、あるとき、ほんとに自分は文学が好きなのだった、と自分に発見する。こういう過程は、私たちのすべてが経験していることではないだろうか。
文学の発端とでもいうような、こういういきさつを、思
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